池田秀幸先生の功夫

 昨年十二月に、知人の紹介で陳式太極拳の池田秀幸先生にお会いできた。噂に聞いていたその功夫を間近に拝見させていただいたばかりか、いろいろと体験させてくださった。

 池田先生は功夫があるだけでなく、その功夫をどう応用するかという点でも非凡なものがある。相手の攻撃を見切って間合いをはずし、するりと相手の懐に入り込んで強烈な発勁を放つ。

 そのとき、股関節をどう使うかを詳しく説明してくださったが、陳式の動きに含まれる微妙な体の使い方をいかに入り身に応用するかを徹底的に研究し、身につけておられることに驚いた。

 型どおりの動きが、研究を深めることによってそのまま実戦に使えるということを改めて見せていただいて、伝統武術を愛する者として感動したのだった。

 池田先生は内功もすごくて、発勁の威力はもちろん、ボディの打たれ強さも尋常ではない。私ごときはもちろん、アメリカでは二メートル百キロ以上という、筋トレで鍛え上げている男に鳩尾を思い切り殴らせても平気だったという。

 「この体はタントウで作りました」とおっしゃっていたが、腹周りはゴムのように硬く張った弾力があって、確かに少々の打撃ではびくともしそうにないのだった。

 人柄も控えめで威張ったところがなく、思わず応援したくなるタイプ。世渡りや組織の運営は得意ではなさそうだが、私にとって、いい生徒を育てて活躍していただきたい武術家の一人なのである。