横山和正師範のナイファンチ

横山和正師範(沖縄小林流・国際空手道研心会館館長)とは、20年以上の付き合いになる。師範が福昌堂まで遊びに来てくれ、アメリカや沖縄、台湾のいろいろな話を聞かせてくださった。当時から自分で原稿を書き、写真も用意して持ってきてくれる、器用な空手家だった。

当時の話で印象に残っているのは、沖縄の道場に内弟子として入り、二か月にわたって猛特訓を行ったこと。ナイファンチやサイを一日中繰り返したという。

サイの訓練によって手の皮が剥けてぶら下がり、サイに巻き付いていたというから凄まじい。

ナイファンチの凄まじい発力も、この特訓で体得したようだ。「中心から弾けるように放つ」というその発力は、八極拳や心意把を想起させる。

私は昨年、横山師範のナイファンチにヒントを得て、発勁の体得に進歩があった。ナイファンチには「諸手受け」という、片手で内受け、もう一方の手で下段払いを行う技がある。

横山師範のこの技は腰を左右にねじることもなく、同時に前方に向かって勢いよく両腕が出ていく。

中国武術にも虎形拳や馬形拳、双按のように、両手で打つ技が多く出てくる。劉雲樵の得意技も、虎撲という両掌で打つ技だったそうだ。

いったいどうやればあのような力の出し方ができるのか。自分にとって大きなテーマだった。

それがわかったのは、昨年の夏頃だった。八卦掌にも両手で打つ技があるのだが、この技を何気なく練習していて、突然感触がつかめたのだった。

あの時は、走圏で作ってきた丹田を足場にして、両手を打ち出すという感覚だった。長い間遠藤先生に走圏の指導を受け、少しずつ丹田に気血や力を集中できるようになっていたのだろう。

その経験があってから、横山師範のナイファンチがまた違って見えてきた。身体の中心から弾き出されるあの力強い技。肩や腕は無駄な力が抜け、足腰、体幹から出る力と、体重移動による力が拳や掌に集中しているのが見て取れるようになってきたのである。

私にとって横山師範の動きは、空手に対する長年の謎を解いてくれるものだった。

何だ、首里手って北派の武術と同じじゃないか・・・・・私はそう感じて、非常に腑に落ちるものがあったのである。

ここで紹介するのは、横山師範がアメリカで出演した映画『シャドウ・ライズ』のために撮影されたものである。

監督がBABから出ているナイファンチのDVDを非常に気に入り、ぜひ映画に使いたいということで急遽撮影されたカットだそうだ。

長年の修練で作り上げたキレと威力。首里手の真髄をぜひ見ていただきたい。