ニチャン・リンポチェの教え 



 先日の講演会で、印象に残った教えが二つ。仏教とは非常に簡単な教えなのだそうだ。

 輪廻転生と因果応報の法則を信じ、来世は今よりよい世界に生まれるよう、現世で善行を積むこと。

 「皆さんは日本に生まれたのだから、前世でよい行いをしてきたのです。ですから、今生でも善行を積んで、もっとよい世界に生まれるよう心がけて下さい」

 リンポチェはチベットに生まれ、五歳で活仏として選ばれ、やはり活仏である尼僧に育てられて幼少より仏教のエリート教育を受けてきた。中国軍の侵略にあってインドへ亡命し、国を失うという苦難の人生を歩んできた人だ。

 国を追われてインドで苦労している同胞や貧しいインドの民衆の生活を間近に見てきたリンポチェの目には、日本は極楽のように写るのだろう。確かに、ミサイルを飛ばしてくる某国や、戦乱に明け暮れる国、貧困にあえぐ国の人々を見るにつけ、日本に生まれただけで幸福なのだということが実感される。

 原因なくして結果はない。幸せな国に生まれたのは、それなりに理由がある。釈尊はこう結論づけたのである。善行を積んでこの国に生まれたのだから、もっと善行を積んでさらによい世界に生まれ変わりなさい。願わくば解脱しなさい。そうリンポチェは教えて下さった。

 もうひとつは、戒を守ること。仏教には十善戒という戒律があるが、こうした戒を守って生活することが、そのまま善行を積むことにもつながる。善行を積むには、これらの戒律を守って生活をすればよいわけである。

【十善戒】

 不殺生 (殺さない)
 不偸盗 (盗まない)
 不邪淫 (邪淫しない)
 不妄語 (いい加減なことをいわない)
 不綺語 (お世辞をいわない)
 不悪口 (悪口をいわない )
 不両舌 (嘘をつかない)
 不慳貪 (欲張らない)
 不瞋恚 (怒らない)
 不邪見 (不正な考えをしない)

 身口意の三つに十善戒を当てはめれば、口の戒律だけが四つあることがわかる。口のカルマは、それだけ重いということだろう。

 立派なことをいっていても、人の悪口、批判をやめられない人もいる。かくいう私も、つい人の批判をしてしまうことがある。

 来世はもっといい世界に生まれるように、ことばには気をつけたいものです。