単換掌

 私の学んでいる八卦掌は、最初の三年間で八母掌のうち四掌と、いくつかの基本技を学ぶ。もちろん練習の中心は走圏で、それも両手で下方を押さえるようにする熊形走圏が中心である。

 それらの技は二年間で学び終え、最後の一年は復習に当てることになっている。昨日の練習ではついに基本技を終え、復習に入った。

 ちょうど時期的にもよかったな、と思っている。最近はつくづくと自分の功夫不足を感じているのだ。沈めきれない、足が弱い、腰が発達してこない、丹田に気が落ちない、言われたとおり歩けない・・・・・

 そうした自分の欠点というか至らなさを痛感していたので、三穿掌や帯手といった高級技よりも、八母掌の第一、単換掌に戻るのが嬉しいのである。

 昨日復習したのは単換掌のすべてではなく、最初の扣歩一動作だけだった。しかし、規格通りに扣歩するのは実にむずかしい。足が窮屈だし、きちんと気が降りない。足だけでなく身法の伴った扣歩を行うのもむずかしい。中国の先生は十数年練習して「やっと最近標準的な単換掌ができるようになった」と言ったそうである。

 中国の先生は週に一日働くだけでいいらしい。しかも独身なので、毎日の時間をほとんど練習に使っているという噂である。武術が大好きで練習熱心なあの先生でもそれだけかかったのだから、われわれができないのは当然なのだが。

 今日も少し扣歩をやってみたが、簡単じゃないな。走圏や馬歩とも違った種類の足の強さが要求されるのだ。こうして仕事とは違った課題に頭と体を悩ませるのも、両方にとっていいことなのかもしれない。