[足登]について、そして「功夫」創刊!

 先日の教室では、走圏と[足登]の関係を教わった。[足登]とは踏むとか蹴るといった意味の中国語。自転車のペダルを踏むという表現には、[足登]という字が使われる。足へんに登と書くのだが、日本語にはない漢字なので、[足登]と表記しておく。

 [足登]というと、膝のバネを使って地面を蹴るような動作を想像するが、この日教わったのはそうではない。八卦掌で重視する筋と気血、そして「沈」が結合した結果、[足登]に反映するのだ。

 このことは何度も習って知っていたつもりだが、走圏の際に意識が足りなかったなと痛感。

 この日、個人的に注意を受けたのは、胃経を開くということ。腰や脇腹がある程度充実してきたら、胃の経絡を開かなければならない。最近胃腸の調子がよくなかったのだが、これも胃の周囲が充実してきたのに経絡が開いていないために起きた現象かもしれないとのこと。足や背中が痛くなったのと同じようなことが、胃腸でも起きていたのだ。

 何度か書いたが、改めて思うのは遠藤先生の練功経験、教学経験の深さ。武術で必要、重要なポイントを、本当にわかりやすく、噛み砕いて教えてくれる。「細かいところは自分で気づけ」という態度は微塵もなく、辛抱強く、一つ一つ、適切な時期に必要なことを教えてくれるのだ。

 李先生は確かにすごい武術家だが、何しろ半年に一度しか教えてもらえない。しかも大勢の中でちょっと直してもらうだけである。李先生に習っているだけでは、自分のような怠け者の凡才にはとてもここまでこれなかっただろう。

 というわけで、今後とも遠藤先生について行きたいと強く思うのである。


 話は変わるが、学研より「功夫(ゴンフー)」という中国武術専門誌が創刊された。

 かつての同僚たちが作っているからいうわけではないが、すごくいい内容だ。

 以前の「武術」(福昌堂刊)は、内容は濃いがちょっと詰め込みすぎだった。今回は学研の椎原氏がプロデューサーとしてデザイン、編集をコントロールし、村上・野村両氏が取材・執筆に専念している分、整理されて読みやすい。

 同じスタッフで作っていたムックでは、一般向けを意識するあまりマニアとしては食い足りない面もあったが(一部私も参加していたのだが)、「功夫」では専門誌魂全開といった感じで、パワーあふれる誌面となった。

 本文では、個人的に「通背纏拳」、「意拳」の記事がおもしろかった。通背纏拳、つまり洪洞通背拳は私も以前に取材したのだが、この「子拳」は見たことがなかった。洪洞通背拳とは、2種類の拳法を会わせて伝える門派なのだな。査拳通背拳を一緒に練習する門派、とりあえずそういう乱暴な結論を出してみた。

 意拳は、河北石家庄の楊鴻晨老師を紹介。複数の意拳の老師につき、王向斎の伝えた形意拳八卦掌も学んでいて、独特の風格を持っている。

 そして、今回創刊された「功夫」が以前の「武術」と大きく違うところは、付録にDVDがついているところ。この内容がすごいのだ。

 通背纏拳、意拳などの映像を見れたのには感動した。写真や文章をいくら尽くしてもわからない動きが、一目瞭然だ。このDVDだけでも五千円くらいの価値があるのではないだろうか。

 意拳については、他にも姚承栄老師一門の表演が収録されていて、これも見物。試力、推手、散手と、迫力満点である。

 DVD付きの雑誌、これこそ中国武術の専門誌に必要なスタイルだったのだな、思わずそう確信してしまったこの「功夫」。1600円は安い! 売り切れ間違いなし、DVD付きなので増刷は期待できない。書店へ走るべし! アマゾンでも売ってるぞ!

功夫(ゴンフー)―中国武術専門誌 (Gakken Mook)

功夫(ゴンフー)―中国武術専門誌 (Gakken Mook)