バオバブの木



 夏の講習で、李先生に上体をずいぶん直された。その時、これまでにない独特の感覚があった。

 この感覚について考えていたところ、練習後の懇親会で参考になる話を聞けた。最近になって、この二つが結びついてきた。そのおかげで、含胸についての理解が進んだ気がする。

 提肛について遠藤先生に新しい教えを受けたことと相まって、中盤への気血の集中が一段階進んだようである。ある人はこの感覚を「バオバブの木のようだ」と表現していた。

 中盤の充実が進んでくると、それをさらに沈めていくのだが、時には足の裏にまで達する気がすることがある。もちろん気がするだけなのだが。

 沈身が少し進んでくると、それを利用して打つ感覚がなんとなく予想できる。すると、足も腰ももっと強くなければ、それを支えることができないこともわかってくる。動く相手にそれを発揮するのは、まだまだ先の話だ。

 ところで、霍文学先生の「霍氏八極拳」が発売された。霍文学先生は、何を隠そう私が会った武術家の中で、もっとも強いと思った人だ。

 動きは速くないし、どちらかというともっさりしている。腰も高い。私もまったく評価していなかったが、触れられてビックリした。とにかくすごいのだ。

 何がどうすごいかは、またゆっくり書きたいと思う。見かけと大いに違う霍先生の功夫は、私に多くのことを教えてくれた。

 それと、この本には馬貴派八卦掌の秘伝、核心ともいえる部分とまったく同じことがさらっと書かれていてビックリ。やっぱり李書文の強さの秘密はこのあたりにあったんだなあ。