タミフルの副作用

 小五の娘が月曜日から熱を出して学校を休んでいる。昨日近所の医院に連れて行ったら、B型インフルエンザと判定され、いくつか薬を処方された。

 そして先ほどネットでニュースを読んでいたら、気になる記事があった。

 「インフルエンザ脳症に新タイプ、大阪で子供6人死亡」

 要するに、抗ウィルス薬の副作用で子供が睡眠中に突然死しているのである。その薬は抗ウイルス薬オセルタミビル(商品名タミフル)という。調べてみると、うちの子が服用しているものと同じである。

 もう四、五年前になるが、とある本の編集をした。富山県に住む女性が自費出版した本がテレビドラマ化されることになり、それを当て込んだ出版社が編集しなおして売り出すことになり、その仕事を頼まれたのである。

 その女性は小学六年生の娘をインフルエンザ脳症で失っていた。その子の思い出と、亡くなるまでの経過をつづった本を自費出版していたわけだ。

 その本の巻末には、看護の記録が日誌風にまとめられていた。何を食べさせ、どのような様子だったか、どんな薬を使用し、熱は何度だったか。そして女性は看護師の経験があるのか、Kという単位を使って体温をまめに記録していた。

 その中に気になる記述があった。座薬を頻繁に使っており、女の子はそれをいやがるのだが、「使わないと熱が下がりませんよ」と看護師に説得されているのだ。

 入院して一週間ほどで女の子は意識障害を起こし、小学校の卒業を目の前にして亡くなった。

 私は直感的に、薬害ではないかと思った。だから日記の部分をわかりやすいように整理し、「K」が体温の単位であること、ボルタレンが解熱用の座薬であることといった注をつけておいた。ドラマは年末のスペシャル番組として放映され、本は10万部近く売れた。少しは薬害のアピールに役立ったのだろうか。

 それから一、二年して、ボルタレンインフルエンザ脳症の関連が問題視されるようになった。富山の女の子と同じ症状で亡くなっている子がたくさんいることがわかってきたのである。

 うちの娘は、高熱が出ると軽い意識障害を起こす傾向がある。今回もトイレに行ったかと思うと「車、車」と階下を指さしてわけのわからないことをいったことがあった。後で聞くと、階下の部屋が自動車でいっぱいになっていたそうである。その後、枕元にママのお金が落ちているといって、さかんに指で探っていた。表情も思いつめたようで、不気味であった。

 過去に同じようなことがあったのでそんなに心配はしなかったが、気味が悪いことは確かである。小さい頃から寝ぼける癖があったので、高熱を出すと幻覚が生じるのだろう。

 富山の女の子も、亡くなる直前には意識障害を起こしていたようだ。娘の様子を見て、その子のことを思い出した。今回インフルエンザ脳症でわが子を亡くした親たちも、富山の方のように嘆いておられることだろう。

 子供をなくす以上に辛いことはないという。残されたご両親や家族の心痛が一日も早く癒えるよう祈ることしか、われわれにはできることはない。