やっと練習について行けるようになった。やはり11月頃の状態に戻るまで、二週間くらいかかってしまったな。

 おかげで、筋(スジ)のなんたるかがわかった気がする。走圏、特に円の中心に向かって構える龍形走圏の時に、足の「筋」の衰えを痛感した。昔やった馬歩タントウなどとは少し辛さが違うのである。たぶん、小さい筋肉や腱、靱帯というものに余計に負担がかかっているのだろう。馬歩でもそういうやり方があるのだろうが、私の場合主に太腿が疲れるだけだった。

 小さな筋肉に負担がかかるのは、えもいわれぬ苦しさがある。初めて学んでから二年半がたっているわけで、頭の方がある程度要領を覚えているから、正しい形をとろうとする。しかし必要な「筋」は衰えている。帰りたくなるような辛さだった。

 週に一度の練習だと復調には時間がかかっただろうが、ちょうど中国から先生が来ていて、週に二回の練習会があるのが幸いした。相当苦しかったが、ガマンしているうちに耐えられるようになってきたのだ。しかも、この月曜日くらいから丹田の感覚が出てきた。

 練習会の翌朝、フトンの中で手がすごく暖かく、血流が盛んになっているのが感じられた。気がつくと、手だけでなく、足先まで血流が感じられる。いや、実は全身を血液が盛んに巡っているのが感じられたのだ。一晩たったのに、すごい効果だな、と感心。

 週二、三回というハイペースでしごかれたおかげで、体調を崩す前より走圏がよくなった気がする。腰がより安定し、沈むようになった気がする。

 日本の先生から、私のなかなか治らない悪い癖をかなり強力に指導してもらったのも、効果があった。おかげで丹田の感覚が出てきたようで、血流がよくなったのもそのせいだと思う。丹田とはすごいものなんだな、とその片鱗に触れた感じだ。

 練習会の帰り、中国の先生と少し話をした。この二か月ろくに練習できなかったので、練習が辛いという話をしたら、親切に答えてくれたのだ。馬馬虎虎な私の中国語なので、かなりの超訳だと思うが、だいたいこんな内容だった。

 「いや、悪くないよ。自分は始め太極拳をやっていたから、八卦掌を始めたときは大変だった。お前は他の武術をやっていたから、俺が同じくらいの年数を練習した頃より、ずっとできてるよ。心配するな」

 才能や情熱、練習時間ともに私よりずっと上の先生が言うことだから、言葉通りには受け取れない。しかし、「先生も人間なんだな」という親しみやすさを感じて、非常に励まされた。

 現実の先生の実力を見ると、とても自分が追いつけると思えない壁を感じてしまう。だけども、先生も始めた頃は普通の人間で、悩み苦しみながらあそこまでいったということが何となくわかった。どこまで行けるかわからないが、自分も同じ道を歩いているのだ、ということを感じさせてくれたのだ。

 あそこが違う、ここが違うという教え方ではなく、励まし、自信をつけてくれるこういう言葉は、本当にありがたい。この先生には、ただ技術を教えるのではなく生徒をひっぱっていこうという気持ちを感じることがあるが、それが心からのものだということ感じることができたのである。