ようやく復帰しつつあり 



 先週くらいからやっと体調が元に戻ってきた。思えば12月の初旬に調子を崩して以来、二か月近くもまともな練習をしていなかったのだ。単行本の締め切りも重なり、一日10分くらいしか練習できなかった。

 先週から中国の先生の練習会が始まった。初日は参加できず、25日に参加した。この時、自分がいかになまっているか、痛感した。毎週の練習でもなまっているなとは思っていたが、本場中国で毎日85歳の先生から直々に何時間もしごかれている先生はひと味違う。

 一か月以上なまくらな練習を続けたために、まず筋が弱くなった。熊形走圏を少しだけやってお茶を濁していたために、龍形が苦しくてたまらない。なまじ要求が理解できてきたが故に、正しい姿勢をとろうとすると、真冬というのに汗が噴き出る。

 もうひとつ弱くなったのは、心。苦しい練習を無意識に避けるようになってしまった。練習会ではしかたがなくやる。あまりの苦しさに逃げたくなるが、それでもその場にいる限り、やらざるを得ない。しかし、自分の練習を追い込んでやることができなくなってしまった。つい甘くなってしまうのだ。

 だから、何とか練習会に出て、心と体、両方の調子を取り戻そうと思っているのだ。いったん下がってしまった体力と精神的テンションを取り戻すのは実に大変だ。

 さらに、締め切りで心に余裕がなかったために、いい加減な走圏になっていたようで、すっかりバランスが狂っていた。やはり心をすべて練習に集中して、じっくり取り組む時間を持つことが不可欠なのだ。忙しいとそれができないのだ。

 しかし、先生や練習仲間にいろいろとアドバイスをもらって、かえって以前より理解が深まった気がする。今までは何となくできていたところも、いったんわけがわからなくなったことによってポイントがはっきりし、大事なポイントは何か、自分なりにはっきりした。

 忘れないようにメモしとこう。
1. 体の中正を保つには、腰と腰の側面の充実を基準とする。
2. 足の運びは、前後より沈めることを重視する。
3. 上体の角度は、軸足にすべての重さがかかることを基準にする。前傾しすぎない。

 今回の練習会は単換掌がテーマのようだ。応用を学ぶことによって、単換掌の理解が深まった。あの簡単な動きの中に、確かに八卦掌のすべてが詰まっている。単換掌にも走圏の要訣をすべて適用し、その上で正しくやろうとするとこれまた一歩も動けないほど苦しく、むずかしい。

中国の先生が練習会で教えることは、通常の教室ではやらないという。練習会で習わなければ、永久に習えないわけだ。変化応用の技ばかりなので覚えるのが大変だが、忘れないようにしようと思う。

 用法の多くは、発表できないような危険なものが多い。一般に伝えてきたものではないので、使うためのものしかないのだろう。しかも、董海川や尹福、馬貴が練習したレベルを走圏の段階から要求されるわけだから、普通の人間には苦しく、理解しがたいのも当然かもしれない。

 今のような不規則かつプレッシャーの大きい仕事をしていたらそれなりのことしかできないとはうすうす感じてはいるが、自分の器と境遇の中で、精いっぱいあがいてみたいと思う。