中国の先生が一ヶ月間来日していた。そのため、普段の教室とあわせて週三回も練習に行った。

 私には中国の先生と日本の先生が二人いるわけで、このことが学ぶ上で非常にためになる。教え方も動きの個性も違うので、一つのことを違った角度から見ることができるのだ。

 武術を学ぶには、良い師に恵まれることが大切なのはいうまでもないが、良い兄弟子に恵まれることも非常に重要なのである。先生の動きが完成されてしまっていて、自分とは別のものという感じがしてしまうことがあるが、兄弟子は自分と師の中間に存在していて、その隙間を埋めてくれるのである。また、師が忘れてしまったような初心者の悩みにも、兄弟子ならではのアドバイスが役に立つことが多い。われわれの教室はみな初心者なので、日本の師が兄弟子のような役割を果たしてくれるのである。

 中国の先生はすごくエネルギッシュで、そのエネルギーの刺激を受けてこちらも普段以上に体を動かすことができた。密度濃く学び、練習したおかげで少しは進歩した気がする。

 中国武術に限らないのだが、伝統武術を学ぶ上で必要なことは焦らないことだな、と改めて感じる。武術なので早く威力を出したいのは当然だし、先生がすごい発勁を見せてくれたりすると、それにとらわれて外見をまねしようとするのは当然のことだ。

 しかし、必要なのは注意点を全部守った上で動くことだと思う。伝統武術の力の出し方は、一朝一夕では身につかない。この年になって私が思うのは、「なぞる」ことの大切さである。

 焦らず、力まず、注意点を守ることだけを考えてひたすら動きをなぞる。結果が出るまで、もしかしたら数年かかるかもしれない。飽きるし、疑問も出てくる。しかし、いったんこれが正しいと判断して練習を始めたならば、まず三ヶ月続けなければならない。次の目標は一年。そして三年続ければ、教えが正しい限り、かなりの成果が上がるだろう。

 中でもむずかしいのが、「整勁」と呼ばれる力だ。これは私も感覚だけはわかるが、実際に運用することはできず、練習中である。整勁については、また機会を見て書きたいと思う。締め切り中なので、忙しいんです。