形意拳の用法 

 形意拳が左前しか練習しなかった、という事実は戦法を考える上で興味深い。きちんと学んでいる人には当たり前のことだろうが、一般には本当の使い方はあまり公開されないからだ。

 形意拳の先生はとくに用法を説明したがらない。孫剣雲女史にいたっては、用法を質問したら怒り出した。研究家の黄新銘氏も怒り出した。李文彬氏も、最低限しか答えてくれなかった。徐文忠氏はどう見ても実戦的ではない心意六合の用法を示してくれた。つまり、それだけこの門派は保守的なのだろうと思う。

 上海の心意六合拳に伝わる四把捶は、左前の構えで始まり、右足を一歩踏み込んで並歩となり(鷹捉)、左足を踏み込んで虎撲を打ち下ろす。これは、形意拳の劈拳と同じ技の流れではないかと思う。

 右利きの人が左前で構え、三体式では右足だけ鍛える。こう考えると、形意拳とは拗歩を得意とし、右足による[足登](とう)の力を重視する……と考えられるのだが。いかがなもんでしょう。