中国武術にかかわって25年になるが、今頃馬歩のやり方がわかってきた。

 馬歩というのは基本のキとでも言うべき立ち方なのだが、やはり最初に習うものは一番多く練習するだけあって、重要なポイントがずいぶん隠されているのだな。

 八卦の走圏を習って気がついたことが多いのだが、そのひとつは大臀筋の使い方。お尻の筋肉の使い方は武術において大きなポイントを占めていたのだ。恥ずかしながら全然知らなかった。

 ずっと以前、たぶん20代の頃にクラシック・バレエの立ち方について聞いたことがある。バレエでは中腰で立つとき、大腿四頭筋ではなく、大臀筋を使って立つことが必要なのだという。大腿四頭筋で立つと太腿が太くなってしまい、スタイルに影響するからだ。

 同じ姿勢なのに、違った筋肉を使った立ち方がある……このことは印象に強く残った。だが、具体的にどうすればいいのかわからなかった。

 われわれは月に一度「ピュアハート・クラブ」という勉強会を開いているのだが、フェルデンクライス・メソッドの講習会を行ったときのことである。ゲストの若狭利男氏が、奇しくもこの話をしてくれた。

 フェルデンクライスは、大臀筋が「立つ」という行為にいかに使われるかということを学ばせてくれる。そして、これはダンスなどの舞踊に役立つほか、武術にも大きな意味を持っているのだ。

 大臀筋をうまく使うことにより、よりラクに、効果的に動けるようになる。大腿四頭筋に頼るとどうしても「居着く」傾向があるが、大臀筋を使うと安定しつつ、動きを秘めた姿勢をとりやすい。

 以前、若狭氏にフェルデンクライスのレッスン法を教えてもらったことがある。その時はできたのだが、日が経つとできなくなってしまっていた。しかし、最近八卦の走圏で実は同じことをしていたことに気づき、また単換掌の馬歩で指導された立ち方が大臀筋を使った立ち方だったのだ。

 25年も大腿四頭筋を使ってきたために、新しい立ち方はまだなじんでいない。この立ち方に気づいてから、馬歩や走圏といった基本中の基本には、実は隠されているものがまだまだあるのではないか、と思うようになった。

 というわけで、今週の土曜日には若狭氏によるフェルデンクライス・メソッドの講習、しかもテーマは「機能的な立ち方」をやることになった。「立ち方」を考え直してみたい方は、ぜひ参加してください。ピュアハート・クラブは→ここ