練功法の重要性

 大東流合気武術の佐川幸義先生は、鍛練を非常に重視しておられた。「道場に来るだけではなく、自分で鍛練しないとダメだ」とよくおっしゃていた。

 最近になって、ようやくその意味がわかってきた。八卦に触れて、鍛練の意味と大切さがわかってきたのである。

 フルコン空手ではウエートトレーニングによって体を作る。伝統的な空手よりも徹底して身体作りを行い、ムエタイの技術を取り入れることによってフルコン空手は進歩した。

 同じように、本当は伝統武術も体を作る鍛錬法が必須なのである。しかし、それは非常に根本的で大事なことであるが故に隠されてきた。フルコン空手でウエートが秘伝になっていたらどうなるか。知っているものが強くなり、知らないものは永遠に追いつけない。鍛錬法を秘伝にするのは、そういうわけがあるのだ。

 佐川先生も鍛練の重要性は強調するものの、その方法は教えなかった。先生の断片的な言葉から、各自が工夫するしかなかったのである。四股踏み、各種腕立て伏せ、木刀や振り棒の素振り。千回単位のそれを約10種、一時間半ほどですませてしまったという。それが佐川先生の超人的な技の源だったのだ。

「合気の体を作りなさい」と佐川先生はおっしゃた。同じように、太極拳太極拳の身体を、八卦八卦の身体を作らなければならない。だが、中国でも同じように、鍛錬法(練功法)は秘伝中の秘伝のようだ。発勁や招法が少しずつ知られるようになっては来ている。しかしその反面、名人の伝説的な強さはあくまで伝説として葬られる傾向にある。それは練功法を知らないからだ。

 一般的な練功法にもそれなりに効果はあるが、それだけでは段違いの強さを得ることはできない。何事にも上には上がある、自分には知らないことがある。そうした柔軟な心を持っていないと、大きなものはつかめないと思う。