四股の踏み方

 以前、佐川道場で一年ほどお世話になったとき、佐川先生は「道場に来るだけではだめだ。自分で鍛錬しなさい。四股や腕立て伏せをやりなさい」とおっしゃった。

 当時、自分では毎日中国武術の練習をし、馬歩タントウもやっていたのでほとんど四股はやらなかった。

 佐川先生がどういうやり方で四股を踏んでいたのかは明らかではないが、門人の方が少しずつ発表されている内容を見て思うところがあり、自分でもやってみた。

 佐川先生は足を高くは上げず、小さく、すばやく行っていたようだ。足を降ろすときよりも、あげるときの方が重要だとおっしゃていたように思う。私も足はあまり上げず、スピードはゆっくり行っている。

 やってみて感じるのは、中盤に効くということ。腹筋や横腹など、鍛えにくい部分が鍛えられるように思う。私の場合、軸足へしっかり力が通るように意識している。

 佐川先生は毎日1000回行っていたというが、とてもそんなにできない。最初は50回だけだが、じっくりやればそれでもけっこう効く。

 腕立ても少しずつやっている。太我会の場合、一級以上の審査に「伏臥功」という練功法の審査が含まれている。孫詩先生は鍛錬を重視していて、「内家拳の外功」というのものを指導されている。腕立て伏せに似た伏臥功もそのひとつだ。

 決められた姿勢で静止するのだが、最初は五秒くらいしかできなかった。一級で30秒、初段では一分が要求される。この夏の審査で私は一級を受け、なんとか30秒持ちこたえることができた。しかし、一分はまったく別世界なので、少しずつ準備しているのである。

 腕立て伏せを単なる筋トレではなく、発勁の鍛錬法の一種として練習するにはどうしたらよいか、最近少しずつわかってきた。また伏臥功をタントウの一種として練ることも、理解できてきた。

 四股も、やってみるといろいろと疑問が湧いてくるし、発見がある。youtubeで明治時代の相撲の映像を見ていたら、四股の踏み方が現在とは違うことに気がついた。小錦八十吉常陸山ともに同じ踏み方なので、昔はこんな踏み方をしていたのだろう。



小錦八十吉


常陸山



 現代のやり方と違う点は、上げた足の膝を曲げていることである。今の力士は、上げた足の膝を伸ばし、高々と上げる。明治の力士は膝を曲げるので、上体はあまり傾かない。

 両方をやってみると、効く場所が違うことがわかる。中盤を鍛えようと四股を踏む場合でも、膝を曲げるか伸ばすかで、使う筋肉が少し変わってくるのがわかる。なぜ膝を伸ばすようになったのか? 長年続けると、効果はどのように変わって来るのか? 興味深いところだ。

 通備拳

 私の所属している太我会では、孫詩先生の伝える八卦掌をメインにしているが、同時に長拳系の武術も練習していることを何度か書いてきた。その内容を書けないのがもどかしかったのだが、このたび解禁になったようなので改めて触れてみたい。

 遠藤靖彦先生が代表を務める太我会はこの秋に三周年を迎えたが、発足と同時に始めたのが通備拳の講習会だった。通備拳とは、馬鳳図公が劈掛拳を中心に集大成した門派であり、翻子拳八極拳、戳脚、苗刀、鞭杆など実に多くの内容を含む。

 遠藤先生は16歳の頃から内家拳を中心に学んできたが、三十代半ば頃より錬拳の内容に不足を感じていたそうで、太我会の発足をきっかけに旧知の間柄であった林伯原先生を招いて、年に三回の講習をお願いしたのである。奇しくも先日、十回目の講習会を終えることができた。

 通備拳の特徴は、動作が大きく、発勁が明確で、実戦に徹した内容になっていることである。そこには徹底して現実的な技術があるだけなのだ。

 われわれがこれまでに習ったのは、通備弾腿十[足堂]、劈掛拳・抹面拳(途中)、鞭杆(途中)、通備剣(途中)など。通備弾腿は劈掛、八極、翻子などの要素が詰まっていて、実にためになる。鞭杆は複雑な操作が必要で、頭も体も実に鍛えられる。

 通備拳を練習したおかげで、身法の理解が深まり、発勁に関しても進歩があったし、体力や柔軟性も高まった。内家拳外家拳も、結局は同じなのだということもよくわかった。

 というわけで、太我会は遠藤先生から八卦掌を丁寧に教えてもらえるだけでなく、林伯原先生の通備拳も学べるという贅沢な会なのだ。

東京講武堂

太我会

八卦掌入門

もう明日になりますが、ピュアハート・クラブで「八卦掌入門」と題したワークショップを行います。


各種基本、走圏、老八章の第一掌を学びます。
走圏の意味と練習法、発勁の解説なども行います。

入門編なので、初心者の方も気軽にご参加ください。

※動きやすい服装、上履きをご用意ください。


■指導:生島 裕
■日時:2010年 11月6日(土)PM15:00〜PM17:00(14:30開場)
料金:参加費:¥2000

■場所:青山道場〒港区北青山2-12-39 福澤ビルB1
■会場:青山道場 ※ 地下鉄銀座線「外苑前」駅下車、※ 3番出口より徒歩3分 ※ ブラジル大使館前 福澤ビル地下


URL:http://homepage3.nifty.com/phc/

 懐かしい映像見っけ!

youtubeで懐かしい映像を見つけた。
後楽園ホールで行われた、ロブ・カーマン×ラクチャート・ソーパサドポン。
この試合、リングサイドで写真を撮ったので、よく覚えている。

1ラウンドでケリがついてしまったが、カーマンのフィニッシュ・ブローは、目で顔面へフェイントしてのボディへのストレート。ラクチャートは当時のムエタイ重量級ではトップクラスの実力者だったが、みごとにフェイントにはまってしまった。

この時の記事と写真は、当時のフルコンタクトKARAREに使われた。

この映像には、写真を撮っている自分が映っている。なんと当時26歳、若いなあ。
画面右側で、メガネをかけて一生懸命写真を撮っているのが私です。

 探掌と、放鬆の課題

 昨夜、穿掌や探掌の打ち方についてひとつの気づきがあった。力の出し方ではなく、どう使うか、どう当てるかといった問題だ。

 探掌は八卦掌以外の武術にもよく見られる技で、かなり古くて一般的な手法のようである。高探馬という名前で少林拳や陳式太極拳に含まれているし、古くは明代の書『紀效新書』にも「探馬勢」という技が記載されているから、中国最古の技のひとつかもしれない。

 日本人には空手の「貫手」のイメージがあるから、どうしても指先から突き込む技と思ってしまう。そんなことをして指を痛めないのか、とかよっぽど指を鍛えないとつかえない、などと思ってしまう。

 私も探掌や穿掌の使い方についてなかなか納得がいかなかったが、昨夜は突然に納得できたのだった。要するに、指先で突き込むというより、チョンと触る感覚でいいのではないかと思うのだ。それがどれくらいの威力を持つかは功夫次第なのだが、達人でなくとも意外に効果はあると思うし、自分の指を痛めずに使えると思う。ただし、重要なのは狙う場所と、相手をどうしたいかという、目的意識だと思う。

 走圏では、ここ二ヶ月ほど上体の放鬆をもっと深めようと努力している。また、春から胃腸の調子が悪いので、走圏で治せないかと工夫中。上体の放鬆と足腰の強化、「沈」の追求は、これでよいというゴールはなく、ずっと追求し続けるものだと遠藤先生も常々語っておられる。

 しかし、先日はしっかり足を踏むという意識が足りないとお叱りを受けた。上体の放鬆に重点を置きすぎて、そちらがお留守になっているのである。もちろんそうなのだが、何年も「大力在腿」に集中してきた結果、上体の放鬆が一定以上に深まらないのも事実なので、現在は他をお留守にしてもそちらを追求しようと思っているわけである。

 遠藤先生は、太極拳に専念していたある時期、放鬆を深めるためだけに二、三年をかけたという。その間は箸より重いものを持たず、ひたすら力を抜くことを心がけた。その結果、思った通りにいつでも力を抜いて技を行うことができるようになったという。そして、「力を抜くというのは、そんなに簡単なことではない」というのだ。

 それを聞いて、自分も力を抜くことに専念しようと思ったのだが、なかなかうまくないかないなあ。

 西田幸夫師範の情熱

 昨年の後半より、BABジャパンの月刊『秘伝』の西田幸夫師範の連載記事をお手伝いしている。

 西田師範は極真会館初期から活躍されている方で、第1回全日本選手権から第6回まで出場し、第6回全日本選手権で4位に入賞されている。

 西田師範が他の師範と異なる点は、中国武術大東流沖縄空手、福建の鶴拳などを非常に深く学ばれ、自らの空手に生かしていることである。

 連載は2009年12月号に始まり、以降、2010年2月号、4月号、6月号と隔月に連載されている。

 この連載では西田師範に多くのことを学ばせていただいた。大東流の合気、太気拳、易筋や気血についてなど、実に真摯に武術というものを追求し続けてきた成果の一端に触れさせていただき、非常に勉強になった。

 いちばん勉強になったのは、武術にかける情熱と努力かな。何十年も倦まず弛まず求め続ける姿にはお会いするたびに感動する。連載はまだ続くのでぜひ読んでいただきたい。

 肩胛骨と胸の開合

 走圏に関して、ひとつ気づきが。

 腰や脇腹と同じように、力を入れずに足全体を充実させることができるようになった。これは、もう二年近く前に先生から足の形を直され、充実した状態を作ってもらった感触を元に追求してきた結果、ようやく自分でできるようになったものだ。

 足の場合、股関節、膝、足首、両足の位置関係など要素が複雑なので、腰よりも正しい状態をつかむのがむずかしいようだ。

「大力在腿」という言葉に引っぱられて、つい力みがちになって上体にも影響を及ぼしていたが、きちんと立ち、放鬆と沈身を行えばそれほど力まずとも中盤だけでなく足全体も充実させることができるということがわかった。

 ただ、これは教えてもらって、しかもかなり時間をかけてようやくできるようになってきたわけで、一人で気づいた遠藤先生のすごさにまた感心している次第である。

 全身の重さで足を充実させると、安定して立つためには必然的に抓地が必要になる。無理に力を入れて抓地すると地面と反発してしまうが、しっかり重さを受け止め、安定させるために抓地をすれば、地面にめり込んでいく感じで反発が生じない。

 以上は走圏、站トウにおいてけっこう重要なポイントなのではないかと感じている。

 話は変わるが、最近八卦掌の指導を頼まれ、毎週教えるようになった。まだ生徒は二人だが、教えているとこちらもいろいろと気づくことがあり、非常に勉強になる。

 生徒の一人は、三歳から日本舞踊を三十年以上学んだという女性。さすがに足腰がしっかりしており、丹田がある程度できている感じ。

 もう一人は38歳の男性。空手や柔道の経験者で、かなり鍛えた体をしている。体格でははっきり言って私より断然上である。穏やかだがまじめで研究熱心な性格で、そうとう鍛練した様子がうかがえる。

 二人とも非常に優秀な生徒なのだが、共通する欠点は姿勢がよすぎて上体の力が抜けないこと。特に胸を虚にすることができず、気が落ちないのである。形を直しても、すぐに元に戻ってしまう。

 空手の男性は、特に含胸の姿勢がとれない。いろいろな基本をやらせてみて判明したのは、肩胛骨周りが非常に固いことだった。

 彼は柔道整復師で、肉体の訓練方法にもかなり造詣が深く、柔軟性を保つように工夫しているようだ。しかし肩胛骨周りは盲点だったようで、自分の固さにかなりショックを受けていた。

 中国武術では、胸を開く、閉じるといった運動が重要である。含胸とは、胸を虚にして閉じた状態である。その分、背中は丸くなる。

 この運動ができないというのはどういうことなのかと自分の体で検証してみた結果、胸が動くというよりも、実は肩胛骨が動いているのだということに気づいた。知っている人には当たり前のことなのだろうが、自分にとっては新鮮な発見であった。

 よい投手の肩胛骨は非常に可動域が大きく、背中と肩胛骨の間に指が10cm以上も入るという。小学生くらいの子どもも肩胛骨が柔らかく、姿勢によっては背中から大きく突き出しているものである。

 生徒二人の肩胛骨を見せてもらったところ、二人とも背中からほとんど突き出すことがなかった。これでは上達は厳しいものがある。どうすればこの部分の柔軟性を高めることができるか、私にとっても課題ができたわけである。

 この教室は七月いっぱいは白金近辺で練習し、八月からは新宿に移る予定である。

 また、石神井でも八月から教室が始まる予定で、こちらは女性を中心にすでに10人ほど希望者が集まっているという。

 自分から募集したわけでもないのだが、時期というものがあるのだな、と感じている。

 白金・新宿は水曜日の夜七時〜九時、石神井は未定。
 詳細はお問い合わせ下さい。

e-mail:phc@mbj.nifty.com