肩胛骨と胸の開合

 走圏に関して、ひとつ気づきが。

 腰や脇腹と同じように、力を入れずに足全体を充実させることができるようになった。これは、もう二年近く前に先生から足の形を直され、充実した状態を作ってもらった感触を元に追求してきた結果、ようやく自分でできるようになったものだ。

 足の場合、股関節、膝、足首、両足の位置関係など要素が複雑なので、腰よりも正しい状態をつかむのがむずかしいようだ。

「大力在腿」という言葉に引っぱられて、つい力みがちになって上体にも影響を及ぼしていたが、きちんと立ち、放鬆と沈身を行えばそれほど力まずとも中盤だけでなく足全体も充実させることができるということがわかった。

 ただ、これは教えてもらって、しかもかなり時間をかけてようやくできるようになってきたわけで、一人で気づいた遠藤先生のすごさにまた感心している次第である。

 全身の重さで足を充実させると、安定して立つためには必然的に抓地が必要になる。無理に力を入れて抓地すると地面と反発してしまうが、しっかり重さを受け止め、安定させるために抓地をすれば、地面にめり込んでいく感じで反発が生じない。

 以上は走圏、站トウにおいてけっこう重要なポイントなのではないかと感じている。

 話は変わるが、最近八卦掌の指導を頼まれ、毎週教えるようになった。まだ生徒は二人だが、教えているとこちらもいろいろと気づくことがあり、非常に勉強になる。

 生徒の一人は、三歳から日本舞踊を三十年以上学んだという女性。さすがに足腰がしっかりしており、丹田がある程度できている感じ。

 もう一人は38歳の男性。空手や柔道の経験者で、かなり鍛えた体をしている。体格でははっきり言って私より断然上である。穏やかだがまじめで研究熱心な性格で、そうとう鍛練した様子がうかがえる。

 二人とも非常に優秀な生徒なのだが、共通する欠点は姿勢がよすぎて上体の力が抜けないこと。特に胸を虚にすることができず、気が落ちないのである。形を直しても、すぐに元に戻ってしまう。

 空手の男性は、特に含胸の姿勢がとれない。いろいろな基本をやらせてみて判明したのは、肩胛骨周りが非常に固いことだった。

 彼は柔道整復師で、肉体の訓練方法にもかなり造詣が深く、柔軟性を保つように工夫しているようだ。しかし肩胛骨周りは盲点だったようで、自分の固さにかなりショックを受けていた。

 中国武術では、胸を開く、閉じるといった運動が重要である。含胸とは、胸を虚にして閉じた状態である。その分、背中は丸くなる。

 この運動ができないというのはどういうことなのかと自分の体で検証してみた結果、胸が動くというよりも、実は肩胛骨が動いているのだということに気づいた。知っている人には当たり前のことなのだろうが、自分にとっては新鮮な発見であった。

 よい投手の肩胛骨は非常に可動域が大きく、背中と肩胛骨の間に指が10cm以上も入るという。小学生くらいの子どもも肩胛骨が柔らかく、姿勢によっては背中から大きく突き出しているものである。

 生徒二人の肩胛骨を見せてもらったところ、二人とも背中からほとんど突き出すことがなかった。これでは上達は厳しいものがある。どうすればこの部分の柔軟性を高めることができるか、私にとっても課題ができたわけである。

 この教室は七月いっぱいは白金近辺で練習し、八月からは新宿に移る予定である。

 また、石神井でも八月から教室が始まる予定で、こちらは女性を中心にすでに10人ほど希望者が集まっているという。

 自分から募集したわけでもないのだが、時期というものがあるのだな、と感じている。

 白金・新宿は水曜日の夜七時〜九時、石神井は未定。
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