手塚治虫マガジン」を毎号買っていたが、いきなり最終号になってしまった。出版不況のため、とか巻末に小さく書いてあった。子供も喜んで読むので、創刊号から買っていたのだが。

「バンパイア」も佳境だったのになあ。私が小学校高学年だった頃、すなわち三十数年前、母親の買い物について行って毎月「別冊少年サンデー」を買ってもらうのが楽しみだった。たぶん合計で20冊以上あったと思うのだが、ある日帰ると全部捨てられていた。あのショックは忘れられない。毎日、何度も読み返していたのだ。

「バンパイア」にはいろいろと思い出があるのだが、それはさておき。

 今回の「手塚治虫マガジン」の刊行停止で感じたのは、出版不況の深刻さ。私は業界にいるので身をもって知っているのだが、改めて突きつけられた感じだ。先日ライターの友人から聞いたのだが、有名な大手出版社でも身売り先を探しているところは多いらしい。

 確かにわれわれにも仕事は回ってこないし、何より単価が安くなった。それもとどまるところを知らず、状況はどんどん悪くなっているのである。もちろん、出版業界だけではないだろう。電機メーカーなども大変なようだ。ローンがあるのにどんどん給料を減らされ、払えなくなった人も多いようだ。

 私も妻子を抱える身、何とかしなければいけない。どうするべきかずっと考えている。

 その結果、とりあえずの結論はジタバタしない、ということだ。世の中どうなるかわからないから、目先の考えでうろうろしてもしかたがないと思うのだ。心がけるべきは自分を充実させることではないか、と思っている。

 もちろん生活や現実から遊離してはまずい。ただ、「世間並み」ということに縛られて、「世間並み」を維持するためだけに自分の人生を売り渡すことはするべきじゃないと思う。

 というわけで不況の下での生活は楽ではありませんが、己を見失わず、「百万人と雖も我往かん」の気概で参りましょう。