尹派八卦掌講習会の感想 



 去る2月5日に、ピュアハート・クラブで尹派八卦掌の講習会を開いた。講師は北京武術協会副主席・王尚智老師の生徒である林陽先生。

 尹派八卦掌は、私の学んでいる馬貴派八卦掌とも、本田先生の程派とも、賀川先生の梁派ともまた違った風格を持っていた。強いていうならば、少林の風格が色濃いとでもいおうか。

 林楊先生は学んで数年だそうで、それ以前にも武術の経験はまったくないそうだが、とてもそうは思えないほど動きは正確できれいだった。尹派の骨格は非常に素直な少林拳だという印象を持った。

 ただ、含胸抜背などの要求はきちんと存在し、完全に少林と同じというわけではない。素直な動きの中に鋭い穿掌を含む、シンプルで奥深い拳法だと思った。

 当日はまず馬歩站椿、弓歩站椿を学んだ。馬歩は膝が地面と平行になるほど低い。林先生についていけず、思わず悲鳴を上げる男性陣の姿も見受けられた。

 そして仆歩から弓歩へ変化する基本練習。形意拳の燕形、太極拳の下勢といったタイプの、下肢の強さと柔軟性を練る基本である。

 そして走圏の練習。まずは手を自然に下げて歩く。歩き方は自然歩というが、平起平落に近い。とくに降ろす足は平落のようだった。次に円の中心に向かって構えて歩く。この時、体は進行方向に向いたまま、手と顔だけを中心に向けるのが尹派の特徴のようだ。体幹部をねじらないのである。


 そして穿掌。基本練習は、まず弓歩になりながら突く練習。劉雲樵の八極拳で練習する馬弓捶に似ている。そういえば、馬弓捶は他の八極拳には見かけない。劉雲樵が八卦を学んだ宮宝田は尹福の弟子であることを考えると・・・馬弓捶はもともと八卦の穿掌だった可能性も考えられるのではないだろうか。

 穿掌は定歩での練習の次に、左右に移動しながら突く練習。

 そして、最後に帯手。いくつかの技を組み合わせた、比較的複雑な動きだった。

 この講習で私がいちばん学んだのは、素直さがいかに大切か、ということ。林先生は武術の経験や知識がなかったために、先生の動きをそのまま吸収しているのがよくわかるのだ。あの素直さが必要だな、と痛感した一日だった。