我が家は駅から歩いて五、六分、小高い丘の上という好立地にある。北側は数百坪の大きな庭を持つお宅で、おかげで台所からも二階の私の部屋からもすこぶる見晴らしがよく、風通しもよい。

 決して大邸宅ではなく、庭もほとんど手入れしていなかったが、それがまたよかった。奥には竹藪が茂り、庭の一角ではおばあちゃんが畑を耕していた。野ざらしで雑種の犬が飼われていた。だが、おばあちゃんが一昨年、犬も昨年あの世へ旅立ってしまった。

 そして、おばあちゃんが亡くなったためにこの土地も売られてしまったようで、6月から工事が始まるという。跡地には13軒の建て売り住宅が建設されることになった。

 最悪である。住環境一変である。見晴らしのよかった台所の窓の外にも、住宅が迫ってくることになる。夜、カーテン開けっ放しで仕事ができた私の部屋も、人目を気にしながら生活することになる。

 日本の人口は減少に転じたというのに、開発だけは止まらないなあ。高速道路の建設計画もほとんど中止にならないみたいだし。歳入の倍額という日本政府の支出は、こうして国土を切り刻んでお金に換えているわけである。国債という借金は子孫からお金を借りているわけで、しかも子孫に残すべき自然を切り刻んでいる。いいのかなあ。

 うちの裏に家が建つことから、つい天下国家の話になってしまった。明るい気持ちで生きていけるような社会にしてほしいなあ。