先ほど、神戸から電話があった。友人の奥さんからだった。今朝、ご主人が亡くなったというのだ。突然のことで驚いたが、朝、心臓が止まっていたという。

 ひょうひょうとして、ユーモアのある男だった。小学、中学と同じ学校に通い、大学も同じ東京だったのでつきあいがあった。私が実家に帰ったときは、よく遊びに行った。

 話には聞いたことがあるが、寝ている間に突然死んでしまうなんてことが実際にあるものなのだ。きっと苦しむこともなく、旅立ったのだろう。

 彼には二人の娘さんがいた。長女はうちと同じなので高二だ。次女は中学生だろうか。残された奥さんや娘さんたちのショックと悲しみは計り知れないだろう。

 彼とは、中学時代よく一緒に遊んだ。ふざけながら学校から帰ったものだった。中二くらいまではお互いに並の成績だったのに、中三になると彼の成績は突然急上昇した。実は頭がよかったのだ。かれはそのまま学区内でナンバーワンの県立校に入学し、大学は慶應に現役で合格した。そして一年就職浪人して、読売新聞大阪支社に入社。しかし新聞記者は向いてないといって一年ほどで辞め、製鉄会社に入った。

 彼の一族は名門で、大きくて手入れの行き届いた庭のある家に住んでいた。父親は精神科医で、お手伝いさんもいた。きれいな奥さんをもらい、可愛い娘さんも二人いて、順風満帆の人生に見えた。

 なのに、今朝は起きてこなかった。46歳といえば働き盛り。経験と体力のバランスがとれた、いちばんいいときとも言えるのではないだろうか。

 自分だって、明日の朝目が覚めるかどうかわからないのだ。自分だけでなく、家族の皆もそうなのだ。人生とは、そんな不安定で明日をも知れない中で生きていくものなのだろう。

 今週はお葬式やお通夜があるだろう。参加しなければならない。そして締め切りで仕事が山積みである。それもまた人生だ。

 明日の朝起きて来れないかも知れないので、今を精一杯生きる。月並みだが、人生とは要はそれだけなんだ、それだけでいいんだということを、改めて教えてもらった気がする。