中国の反日デモがすごい。異常である。この事態をどう分析し、どう考えるべきだろうか。

 原因はいろいろ考えられる。私がまず思ったのは、中国には「人民を使って国家規模の運動を起こし、自らの立場を有利にする」という政治手法が存在することである。「大躍進」政策の失敗で国家主席の地位を去らざるを得なかった毛沢東が政権に返り咲くために使った手段、それが恐怖の巨大大衆運動「文化大革命」だった。

 今回の反日デモも、誰かが自分の力を誇示し、増強するために仕掛けているのではないか。そんな気もするのだ。今回、毛沢東のような立場にいるのは誰か。政権の座を去ったが、なお未練を持っている者。かつて反日・愛国路線を推進していた者。

 依然として隠然たる力を持つその人物が後ろ盾になり、運動家を焚きつけている。しかも、ガス田開発、日本の国連常任理事国加盟問題といった、自国の利益のからんだ外交的課題があり、日本に圧力をかける武器になる。現政権にとっても悪い話ではない。あくまで想像ですが。

 日本の国連安保理常任理事問題については、ほとんどの国が反対か、関心がないと見てよいと思う。すでに常任理事である国は、理事国が増えることを歓迎しない。相対的に自国の発言力が落ちるからである。アメリカが反対しているのは、こうした心理からである。また、基本的に戦勝国クラブである国連の常任理事国に、敗戦国である日本が加盟することへの反発、嫌悪感も当然あるだろう。

 さらに中国、韓国は単純に日本へのライバル意識がある。侵略者であり、敗戦国のくせに戦勝国の自分たちより発展しているだけでも許し難いのに、さらに国連安保理常任理事国になる。これは感情的に許せないのである。

 その他の国は関心がなく、どちらが自国に有利か、くらいの問題意識しかないだろう。日本の安保理常任理事国入りに賛成なのは、日本以外のG4と呼ばれる今回の候補国、ドイツ、ブラジル、インドくらいのものだろう。

 話を中国に戻そう。中国が反日デモを積極的に取り締まらない理由はなんだろうか。デモを日本に対する圧力として使っている、国内の不満のはけ口として利用する、そんな意図も多少はあるかもしれない。

 だが、抗日戦争を戦い、今は引退している老幹部たちは、小泉首相靖国神社参拝が一番許せないのではないかと思う。反日デモを中国政府が積極に取り締まらない根本的な理由は、このあたりにあるのではないだろうか。靖国に戦犯が祀られているのが問題なのだ。

 私は第二次大戦の戦記物を100冊以上読んだ。実際に戦場で戦った人たちの手記をたくさん読んだおかげで、自分が戦争に行ったような気にさえなっている。だから小泉首相靖国にこだわる気持ちがわからないのでもないのだが、中韓の古い世代はあれを絶対に許さないだろうということも理解できる。

 今年は中国ににとって抗日戦争勝利60周年記念、そして小泉首相の任期は来年九月まで。まだしばらく反日デモは続きそうである。