「中国武術史」 林伯原

林伯原先生は、幼少の頃より馬賢達師範をはじめとする馬一族に通備拳を学び、長じては西安体育学院、北京体育学院大学院で学んだ後に日本に留学、国際武道大学の教授になった方。


私の師・遠藤靖彦先生は北京に武術留学されていた頃からの縁で、太我会発足当時から外部講師として林伯原先生を招聘し、われわれも通備拳を学んできた。林先生は非常に真面目な性格で、60歳を越えられても毎日練習をかかさず、剣術や武器の登路の復習のほか、数キロものランニングも行うという、努力家である。


劈掛拳の弓歩は信じられないほど歩幅が広く、姿勢が低い。高速で套路を行いながら一瞬で低い弓歩になったかと思うと、すぐに次の技に移る。その足腰の強さ、柔軟性は想像を絶している。


筋肉質の体は80kg近くあると思うのだが、旋風脚は私の顔の高さくらいをお尻が通過してゆく。


あの年齢であの体力を維持している武術家は、中国広しといえども数えるほどしかいないのではないだろうか。


バリバリの伝統武術の世界で育ったにも関わらず、体育学院で学んでいるので指導法も実に分かりやすかった。


そんな林先生だが、頭脳の方も極めて優秀で、中国武術史の研究でもすばらしい専門書を発行された。


この度上梓された「中国武術史」は、700ページにも及ぶ大著で、副題にある通り「先史時代から十九世紀中期まで」の中国の武術史が詳述されているのだ。


図版も豊富で、古代の武器の写真や絵など、見ていて飽きない。


内容が濃すぎてまだ詳しく読めていないのだが、知らなかったことのオンパレードで、どこから読めばいいのか迷うほどだ。


太我会でともに学んだ佐藤秀明君は林先生の生徒となり、この本の編集を手伝われていた。


自分の時間も犠牲にしてこの大著の編集に取り組んでいる姿には、頭が下がる思いだった。


ようやく完成したこの大著、林先生を始め、関係者の苦労はなみなみならぬものだったと思う。出版界の片隅にいた者として、その苦労は想像がつくのだ。


専門的な本だけに、機会を逃すと入手困難と思われます。興味をお持ちの方は、早めにゲットしてください。


中国武術史 ― 先史時代から十九世紀中期まで ―

中国武術史 ― 先史時代から十九世紀中期まで ―